携帯が鳴る。
着く時刻はメールしてあった。
電車の中では話せないのに。。。
「はい」
「お前どこにいるんだ?」
「あ。え。。?電車の中です。」
「それのどこだ?」
「あ。。」
そう言ったら電話が切れた。
たちまちパニックになる。。
黒澤はどこからかけたのか。
ここにいたらいけないのか。。
何が聞きたかったのか。。
かけ直しても通じない。。。
荷物を持っておろおろする。。発車の時間まで、3分しかない。
降りなきゃいけないの。。?
おろおろしていると見た背中が横を過ぎた。。
え?
え?
「黒澤さん」
思わず声が出てしまった。
振り返ったのはやっぱり黒澤だった。。
信じられない光景にぼんやりとする。。
黒澤が私の横に座った。
途端に電車は発車した。事故で5分遅れていたらしい。
「間に合わないかと思ったな」
黒澤が笑う。
状況がまったく飲み込めない私。
「え~と。。あの~」
しどろもどろになりながら状況を把握しようとしたが、
何がなんだかさっぱりわからない。
荷物を抱えたままがざがざする私に「うるさい」
と黒澤がたしなめる。
本当にしばらくかかって、黒澤が電車で迎えに来たんだということだけが解った。
何故くるまじゃないのか?
他の予定はどうなったのか?
いろんなことはわからないまま。。。
荷物を置き、黒澤のシャツの端を掴み、黙って窓の外を見ていた。
黒澤は寝ているらしかった。。。