怖さ。。。
恐怖感。。
こんなことしてて、心か体が駄目になったら黒澤にもう逢えなくなる。
もう無理。。。

終わりましたと黒沢に電話する。

人数と時間とどんな人に使われたか。。。
ようやくそれだけ言ってから
「もう無理です」
絞るように声を吐き出した。

人ごみの中で起こったすべては話せない。
また、私は話がまともに出来る状況でもなかった。
「メール書きます」
話したくないと言っても一度目のように却下される。
それならメールをしようと思った。
黒澤は長いだらだらした文章は嫌いだし読まない。
それでも今回だけはしょうがない。

一人目、二人目、三人目。
淡々と文章にしていく。

書くうちに感じている恐怖と向き合う。
極端に言うとあの場所で殺されかねない。
そんな怖さ。
やめてもらえない。
私は逆らうことが出来ない。

本来の自分では考えられない行動のなかで、
黒澤に感じる恐怖感とは違う感覚。
黒澤は私を殺さない。
でもデリでは私は死んじゃうかもしれない。

ただ、本当に怖かった。
平静を保ちながら、気持ちはどうしようもなく耐え切れないものを抱えていた。

黒澤へのメールに書いてもそれは伝わらない。
されたことを並べながら、それでも私の抱えてるものを感じて欲しかった。
私が怖くてどうしようもなかった事を伝えたかった。

送信する。

「最高だな。久しぶりに胸騒ぎがする」

ありえない。。

伝わらない。

私の怖さなんて関係ない。

期待は全て裏切られた。
打ちのめされた。

もう無理だ。。

「私なんかどうなってもいいんだ」
メールをして電源を切る。

ぬけがらのままバスに揺られた。
家に着きお風呂に入る。
ごしごしごしごし体を洗う。洗っても洗っても消えない何かを洗い落とす。
湯船に浸かって、泣いた。
上がって機械的に髪を乾かす。。。
それから携帯の電源を入れる。
他の連絡も入るから切ったままにはできない。

黒澤からのメールが２つ。
開いて思った。
『嘘だ』
そう思ってもそのメールに引き戻される。
また涙が出る。
涙が止まってから、黒澤に電話をかける。

黒澤に聞かれるままに報告の再開。
すがりつきたかった黒澤への気持ち、求めても与えられない私の感性での優しさ。。。
打ちひしがれた期待はもう持たない。

文字にしていなかった細かいことや思ったこと。
ぽつりぽつりと思い出しながら答えて行く。
「何が怖い？」
「だって何されるかわからない。」
「こわいことがあるものか。デリバリーの嬢だ。店が付いてる。
　何かあったら後ろから何が出てくるかわからないのは客が知ってる。
　無茶するわけないだろう。」
。。。。。そうなの？。。。
「だって、怖かったんだもの。逃げられない」
「客はお前の出方を見てる。お前が否定しなかったからそうなったんだ。トラウマで反応するな、状況が違う。そんなもの怖くない」
「だって、アナルも使ってもらえって。それで死んじゃうと思った。。。」
「あのな～。俺が使えなくなると困るだろう」
「そんなのわからない。何が良くて何が断っていいのかなんてわからないもの」
「おまえな～。。臨機応変というのを知らんのか？」
「知らない。。。」

「それにね、自分のじゃないのに噛むの。噛んだらだめなんだから。」
「それはしょうがないな。差し出してる。噛まれても仕方ない」
「だめ、黒澤さんのだもん」
「俺がいいからいいの」
。。。。そうなの？。。。。
「やっぱりわかりません」

「怖くない。体に消えない傷が残ることと、後遺症が残るようなこと、俺が使えなくなるようなことは駄目。基準はそこ。わかった？」
「わからない」
「おまえな～」
「嘘、わかった。。。」

沈黙が続いて
「あのね、汚れた。私、うがいずっとされるほど。汚いの。。」
「ふん、俺がいいからいいの。俺が望んだこと」
。。。。そうなの？。。。。

恐怖は消えた。
言葉で操られているわけではない。それでも誤魔化されてなくなっていく。
単純で馬鹿で狂ってると思う。。。
黒澤がいいんならいい。。。

ひどいのはデリバリーのお客さんじゃない。
ひどいのはそれをさせている黒澤。。。
離れられないのは私。。。