体の調子が悪いと、人はいいことを考えられない。。
ましてや、私のようにマイナス思考だと余計に。。。

私は、検査の結果が出るまでの間、
自分のことよりも黒澤に申し訳ないとばかり考えていた。。

黒澤に体調のことを話さないわけにはいかなかった。
隠しても使えない体ではばれてしまう。
経過を話しながら、もう使えない自分の存在が黒澤の邪魔でしかないように思えた。。。

「役立たずはいりませんよね」
「使えないなら捨ててくださいね」

黒澤の答えはいつも決まって
「俺が決める事だ」
だった。。

薬で体調を調整しながら、結果を待つ。。
とても長い日にちに思えた。

綺麗事に聞こえるかもしれないが、否定して欲しいのではなかった。
黒澤がいなくなった自分よりも、
私が黒澤のところに居る事が、本当にいけないことだと感じていたのだ。。。
黒澤は病気になったからと私を捨てない。
丸ごとそのまま私を所有するつもりだからだ。
それがわかっているから余計に心が痛んだ。。。

『使えないならいらない』
そう言って欲しかった。
そうすれば私は自分を責めなくて済むから。。。
苦しくて、どうしようもなくて、黒澤にお願いした。。

「使えない私は何の役にも立ちません。
黒澤さんのところにいても何の意味も無い。
黒澤さんの邪魔になりたくはないんです。
お願いだから、使えないならいらないといってください。
結果によって捨てると言って下さい。」

黒澤が決める事だとは解っているのだ。

手をつなぐことも無く、恋人のように愛を囁くわけでもない。
その気の無い黒澤は私には触れない。
それでも、私は黒澤の、たくさんの時間を貰って過ごしている。
私が傍に居ることは、黒澤の時間を無駄にさせてしまう可能性もある。。。
使えなくなった私が居たら、駄目だ。。。
居なくなったら黒澤はまた、別の人と出会う。
私がぐずぐずして、黒澤の時間を無駄に過ごさせる訳にはいかない。。。

黒澤は言葉にしない。
きれいごとを言わない。
だから、私には伝わらない考えがたくさんある。

いい方向へ何も考えられなくなってしまっていた私は、
勝手に自分で自分を追い込んで行った。。。

邪魔しちゃいけない。。。

そんな事ばかりを考えていた。。

あんまりしつこい私に、黒澤が言った。

「お前はな、玩具であるが、それ以上でもあるんだ」

知らないところで黒澤はいろんなことを考えているのだと知った。

『お前だけが大事だ』
『お前が居れば何もいらない』
『お前が全てだ』
言葉ばかりで気持ちでは私を裏切ってきた人たちが居た。

黒澤は何にも言わないけれど、考えていると知った。。。

「俺が決めること。お前が決めることじゃない。
ただ、お前が必要だ」

泣いて過ごした何日かが過ぎ、
体調も少しずつ戻り、
日常も落ち着き始めた。。。

黒澤に使ってもらえるのはまだ少し先になるだろうが、
また、私はメンテナンスを始めた。。

手術はまだ先。。
先のことを考えても仕方がない。
どうなるかなど、誰にもわからないのだから。。。

黒澤の元で過ごすこと。。
それが私の今。。。

女として玩具としてだけではなく、私は人としても黒澤に生かされている事に気がついた。。。